人に相性があるように、場所やサービスにも相性がある。また、期待し過ぎると、それもまた、相性と同じように、違和感を覚えることにつながる。
『本当にあった ホテルの素敵なサービス物語』を執筆するまでは、ホテルのコメントカードをほぼ100%記載していた。サービスを提供する側なら、どう評価され、どんな印象を抱いたかを知りたいと思っていたからだ。
最近は、自分の価値観を押し付けていないか、要求が高すぎないか、本当にホテルのためになるかなど、冷静に、慎重に考えて、どうしてもというときだけ、コメントカードを書かせていただく。
歳を重ねるのは悪くないことで、違和感を感じた時は、その場でやんわり伝えたり、自分がしてほしいことをきちんと伝えられるようになった。20代の若造のコメントはなかなか届かないが、36歳にもなれば、それなりに届けられるようにもなった。
作家であることや、相手にとって心痛く、だぶん適切と思われるコメントは、時に相手に特別な配慮をさせてしまうことがある。返信に添えて、お菓子がつくケースなどがそう。いただいた以上は、それ以上ボクがもっているなにかでお返しする。
とはいえ、かつて宿泊券付きで「もう一度チャンスを」と言われたときはまいった。もちろんその時は、VIP対応で迎えてくれたのだが、今後このホテルに泊まりづらくなるからと、これまでと同じ対応でとお願いした。
叱咤激励とあるように、叱咤だけではダメだし、激励だけでもダメ。そのバランスが大事なのだろう。純粋に、相手を喜んでいただきたい、とか、成長の糧になるコメントカードでありたい。
というわけで、ホントに、お菓子は結構です。受け止めてくださったお気持ちだけで、十分ですよ。
たまに、クレーム処理の研修を担当したり、記事を執筆する。だからこそ、違和感を覚えたことは仕方ないにしても、それを伝える技術をより磨いていかなくてはとも思う。こういう立場になると、言わずに、そっと見守るのが一番なのかな。いやいや、言うべきところは、きちんと伝えるべきか。考え出すときりがない。
お客様相談室でクレーム対応にあたる方は、ご意見や苦情をちょうだいすると、自分が批判された気分になり、心が蝕まれる感覚になることもあるでしょう。でも、御社の商品やサービスを支えるのは、物言わぬ大多数の客だったりもします。少数派の意見に目を向けなくていい、そういいたいのではなく、どうか多くのやさしい人たちによって支えられていることを忘れないでほしいのです。